NPO法人市民環境村塾は、環境問題の解決を目指して活動しています。

山小屋アンケート調査結果

平成15年度NGO/NPO・企業環境政策提言に応募し、優秀に準ずる提言となった 「山小屋における環境対策の把握と対策案の実証試験 担当者:佐々木 慶三」を実行に移すため、 以下のようにアンケート調査を始めました。

1.アンケートについての実施計画書(ワードファイル)

2.山小屋からの環境便り

サブタイトル・・・誰でも出来る山小屋の生ゴミ減量作戦
サブタイトル・・・山の環境問題解決のための第一歩
サブタイトル・・・美味しい山小屋料理を食べて、生ゴミ減量作戦

目次

1.はじめに
2.目的

山小屋へのアンケートのお願い(ワードファイル)」参照

3.アンケート調査に当たっての事前検討
3.1 山小屋の定義

アンケートを行うにあたって、山小屋の範囲をどう決めるかが、最も悩んだ点です。

山小屋は一般に登山のために利用する宿泊施設と考えられます。山頂付近の山小屋はこの定義に当てはまりますが、登山口あるいは車道が開通しているところでは、この定義では具体的にどこまでが山小屋に当てはまるのか決まりません。実際に、「うちは山小屋でなく、温泉旅館です。」と断りながらもアンケートに答えていただいた方もいらっしゃいます。

登山口との関係では車道が開かれるにつれて、富士山のように5合目が登山口になってしまっている山もあります。しかし、1合目から登る計画を立てた場合は、そこが登山口になるでしょう。一方で沢登り登山では、車道の分布に関係なく、渓流入り口が登山口になります。
最近では、ピストン登山や縦走登山だけでなく、山麓の周遊、動植物の探索、観賞など入山目的が多様化してきています。

自動車道の開発によって、かつては登山者や限られた地元の人にしか利用されてこなかった秘湯が、大規模なホテルや旅館が立ち並ぶ一大リゾートに変身しているところもある。

このようなリゾート地でも、利用比率は大幅に低下していても、登山者が利用しているとすれば、「山小屋」としての機能もあります。なおホテルや旅館でも、単独で立地している場合は、排水問題など、「山小屋」が抱えている問題と共通する部分もあるのではと考えました。これらは、厳密には山岳地域およびその周辺の宿泊施設と呼ぶべきと考えますが、一般的になじみの深い「山小屋」の呼称を用いた。

以上のような状況を加味して、「山の宿泊施設」(以下、山渓資料と呼ぶ)に掲載されているものを「山小屋」と考え、アンケートの対象とした。

3.2 アンケートのための山渓資料の集計と利用にあたっての区分
1.アンケートの対象としたもの
営業期間にかかわり無く食事付きの宿泊施設を「山小屋(1)」とした。
2.アンケートの対象からはずしたもの
〔〇〇地区旅館〇〇軒〕は食事付きの宿泊施設であるが、アンケートの対象からはずした。但し、山小屋分布の特徴把握のための統計資料としては、まとめて1軒として使用した。 営業期間にかかわり無く食事の付かない宿泊施設を「山小屋(2)」とした。 キャンプ場のうち、バンガロー付きで使用料が掛かるものは「山小屋(2)」として集計し、統計資料として使用した。 使用期間が通年で、無人、無料の宿泊施設は避難小屋に区分し、統計資料として使用した。
3.3 山小屋分布の特徴を把握するための地域区分

地域区分は全国を14地域に区分し、図−1山小屋分布地域区分図に示した。 各地域に含まれる山域は下記の通りである。

地域−1 北海道〔利尻、暑寒、阿寒、知床、大雪、十勝、夕張、芦別、日高、札幌小樽周辺、支笏洞爺、ニセコ、恵山〕
地域−2 東北T〔八甲田、岩木、秋田駒、八幡平、森吉、鳥海、月山羽黒、朝日連峰、飯豊連峰〕
地域−3 東北U〔早池峰、栗駒、船形、蔵王、吾妻、安達太良、磐梯、那須、日光および周辺〕
地域−4 北関東・越後〔奥鬼怒、日光、尾瀬、南会津、銀山湖、谷川連峰、巻機、武尊〕
地域−5 上信越〔守門、浅草、御神楽、越後三山、苗場、清津峡、上信越国境、西上州、戸隠、妙高〕
地域−6 西関東〔奥多摩、陣場、奥武蔵、奥秩父、大菩薩、丹沢〕
地域−7 富士および周辺〔富士、御坂、三つ峠、愛鷹〕
地域−8 南アルプス〔甲斐駒、仙丈、鳳凰三山、白峰三山、塩見、赤石、聖、光、七面山、守屋、入笠、甘利、櫛形〕 
地域−9 八ガ岳および周辺〔八ガ岳、蓼科、霧ガ峰、美ガ原、高ボッチ〕
地域−10 中央アルプス〔
地域−11 北アルプス〔立山、剣、黒部、薬師、白馬、後立山連峰、表銀座、常念、裏銀座、雲ノ平、笠ガ岳、上高地、槍、穂高、乗鞍〕
地域−12 白山・近畿〔白山、伊吹、鈴鹿、比良、金剛、北山、北攝、高野、大峰、台高〕
地域−13 中国・四国〔大山、蒜山、氷ノ山、石槌、四国カルスト、剣山〕
地域−14 九州〔北九州、肥前、由布、鶴見、九重山群、阿蘇、祖母、傾、大崩、市房、尾鈴、双石、霧島、南薩、屋久島〕
3.4 山小屋分布の特徴

全国の山小屋総数は1255棟、内訳は食事が付く「山小屋(1)」が906棟、食事の付かない「山小屋(2)」が126棟、避難小屋が226棟である(表―1地域別山小屋数、図ー1地域別山小屋数)。

このうち今回のアンケート対象の北〜南アルプス、八ガ岳周辺の山小屋総数は全体の30%に当たる378棟。一方、「山小屋(1)」は同36%の327棟である。従って、この地域の「山小屋(2)」、避難小屋の比率は相対的に低下していることになる(図−2各地域の山小屋比率)。

「山小屋(1)」の分布は北海道、東北、近畿、中国、四国、九州地区で相対的に少なく、本州中央部に多い傾向が明瞭である。 これに反比例するように、「山小屋(2)」および避難小屋が前者の地区で多い傾向が認められる。

この原因には積雪などの気象条件、登山者数、登山の歴史的経緯などが考えられるが、結果的に、本州中央部では、山域深くまで「山小屋(1)」が分布し、軽装備の登山が可能になり、昨今の登山ブームとあいまって、山域が活況を呈する一因となり、これに付随するように、環境問題も発生してきているものと考えられる。

3.5 「山小屋(1)」の分布形態

「山小屋(1)」には営業期間から、通年営業と季節営業の2つに区分される。

通年営業は、積雪量が少なく年間を通じて登山客が絶えず、営業に大きな影響が無い地域の山小屋がこれに相当するが、このような例はまれであり、大部分は登山客が大幅に減少するか、いない場合でも営業が可能な山麓の温泉旅館などがこれに相当する。

これに対し、季節営業の「山小屋(1)」は入山者を主な営業対象としており、気象条件や交通運搬手段、登山者数などに直接的な影響を受け、経営上は通年営業に比べ、悪条件下にある。
例えば極端な事例では富士山がある。富士山の山小屋の営業期間は2ヶ月前後である。
富士山では様々な環境問題が起きているが、これらの解決にあたっては山小屋の営業期間を含む経営上の課題を抜きにしては不可能と考える。

季節営業の「山小屋(1)」の比率が高い地域は前述の富士山についで、北アルプス、中央アルプス、南アルプス、「地域−4」北関東・越後などである。

「地域−4」は尾瀬が含まれる地域であるこれらの地域では山小屋総数に占める「山小屋(1)」の比率が高く、山小屋総数に占める「山小屋(1)」の割合と「山小屋(1)」に占める季節営業山小屋の割合は正比例の関係が見られる(図−3「山小屋(1)」の総数と季節営業山小屋数との関係)。

これらの地域は3000m級の山岳や豪雪で有名である。安全な登山をするためには山小屋は無くてはならない存在であるが、山小屋経営上は厳しい環境下にあると言える。

4.アンケート調査
4.1 アンケート地域の抽出

アンケート対象地域は最終的には全国を対象としているが、第1回目は日本の代表的な山域である北〜南アルプスとこれに併走する八ヶ岳周辺を対象とした。

これらの地域は前述したように、厳しい気象や地理条件のもとで、山小屋分布特徴が他の山域と異なっていると共に、最もアルペン的な景観を呈し、多数の入山者とこれを受け入れるための開発が進んだ地域である。従って、山小屋を取り巻く問題が象徴的に内在するのではないかと考えた。

尚、富士山地域の山小屋の営業期間は2ヶ月前後で、山小屋環境は他の山域とは著しくことなり、特殊な環境下にある。このためアンケートは別途、考える必要があり、今回のアンケート対象から除外した。

4.2 アンケート用紙発送数と回収率

アンケート用紙発送数は北アルプス地域146通、中央アルプス地域37通、南アルプス地域59通、八ヶ岳地域76通、合計318通である。

アンケート発送数

8.南アルプス (通年)19通 (季節)40通 (小計)59通
9.八ヶ岳周辺 (通年)43通 (季節)33通 (小計)76通
10.中央アルプス (通年)16通 (季節)21通 (小計)37通
11.北アルプス (通年)21通 (季節)125通 (小計)146通
(通年)99通 (季節) 219通 (総計) 318通
4.3 アンケート内容

アンケート内容は、山小屋の概要、食材の搬入から調理、後処理の状況、調理方法、環境や山小屋経営について質問した(アンケート(PDF))。※このファイルを開くには、Acrobat Readerが必要です。

4.4 アンケート結果

山小屋アンケートの調査結果が報告書になりました。山小屋報告書(PDF)

5.まとめ

アンケート結果に基づいた検討事項と今後の課題

環境 生ゴミ 洗剤 排水
環境 環境教育 ツアー業者、エコシビル、行政、ポスター、パンフの作製、配付
経営、環境 行政と山小屋との意志の疎通
活性化 経営の安定 ツアー業者のツアー方法の開拓などによる集客支援、行政による各種イベントの際の山小屋の宿泊利用など、山域の整備
料理 新メニューの提案 かん詰料理など、新しい食材の開拓、
山小屋に着いての他の組織との協働、連携の可能性

報告書完成後の取り組み

  • 1.報告書の配付・・・補助金などで、製本と山小屋、関連自治体への発送ができないか?
  • 2.「山小屋料理百選」の取り組み・・・料理研究家への依頼、各自治体などから保存食の情報
       (アンケートではしし鍋がメニューにある・・・・・・だったら、猪の燻製料理はどうか、縄文遺跡から、猪の燻製施設が過去にあったらしい。商品名は『いのくん』と言います。)
  • 3.生ゴミ減量に関しての各種の取り組み・・・他の団体、山小屋との具体的な取り組み